トップページ儀礼文化研究会平成30年度第2回

平成30年度第2回

香港 坪洲島天后宫、中元節の先祖祭祀―清代南シナ海海賊、伝承と媽祖信仰―

発表者 国立歴史民俗博物館教授/総合研究大学院大学教授 松尾恒一

 媽祖神は、宋代、福建の実在の女性「林黙娘」を起源とする神霊である。明・清代期に、中国沿岸の漁民や航海をする海商を中心に信仰が広まり、「天后」「天妃」の呼称を与えられて、中国の護国の神としても信仰された。その信仰は内陸部や、海商を通じて、日本や東南アジア等の華僑社会にまで広がるが、本論文では、航海や漁業と関わって、中元節や盂蘭盆会・水陸斎等の先祖供養の儀礼において、媽祖に対する祭祀が行われてきた民俗として、香港坪洲島の天后宮前での中元建醮について検討した。その上で、坪洲島の天后宮前に立てられている、清代の『奉禁封船碑』なる碑文に注目した。漁民が、彼らの生活の支障より清朝政府に漁船を提供しないことを確約するのが、その碑文の内容であるが、その背景に、南シナ海海域で大船団を率いて活動した張保仔をはじめとする海盗と漁民との間に、密接な関係があったことを明らかにした。さらに、こうした媽祖信仰を含む海洋の民俗文化が、アジアとヨーロッパとをつなぐ歴史的な遺産としての価値を持ち、観光等に活用される現況についても論じた。

台南道教の祭薬王儀礼について

発表者 國學院大學教授 浅野春二

 台湾南部の台南地区で行われる道教の死者供養儀礼(功徳/抜度斎)から「祭薬王」を取り上げて考察した。「祭薬王」の儀礼は、台南地区では「薬王酌献科儀」または「薬王宝懺」の読誦という形で行われる。「薬王」は普通「神農大帝」(神農氏)を指すが、ほかにも医薬にかかわる神々が多く祭られる。死者供養の儀礼で「薬王」を祭る理由については、「生前に薬をたくさん飲んだ者は、薬王に特に世話になり恩恵を独占した罪があるので薬王に謝らなければならない」とも、「薬王を祭って、病を治すことができなかった悪い薬の煞(さつ)を祓い、正しい薬を飲ませてもらう」とも、説明されるが、こうした説明はこの儀礼の意義を十分に明らかにしていないのではないかと疑われる。そこで、道教儀礼において宋代以降行われてきた「全形儀」(表象レベルで死者の身体を治療する儀礼)とのかかわりから「祭薬王」儀礼についての検討を試みた。



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最終更新日:2019年6月25日
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