岡山県旭川中流域の棒つかいについて~武術の影響と芸能の系譜に関する考察~
発表者 岡山民俗学会会員 大倉寿仁
岡山県旭川中流域に多く分布する棒つかいについて考察
を行った。棒つかいは「宮棒」ともいい、主に秋祭におい
て奉納される。全国的に見ると、獅子を制御し、警固棒な
どの採り物を使って獅子舞とともに先祓い、キヨメの役割
を担う獅子あやしの一種である。「美作(垪和)へ行って
棒を振るな」という、武術が盛んな土地柄を背景として発
達し、伝承されてきた棒の芸能で、同地域内の旧垪和郷に
本拠地を置く武術竹内流を起源とするカタを取り入れた例
として貴重なものである。青年2名が対峙して六尺棒を打
ち合わせ、時には軽業的な所作、さらには滑稽な劇仕立て
の芸態が見られる。
本発表では、多様な演目の中に武術・散楽・演劇という
三要素が含まれていることを指摘した。今後は伝承経路の
緻密な調査とともに広域的な比較研究を行い、総合的に考
察していくべき課題である。
都市の社会問題に向き合う宗教者と支援活動─山谷のフィールドワークから考える現状と課題─
発表者 國學院大學博士前期課程 富澤明久
本発表は、都市における宗教と社会福祉の歴史を近世か
ら辿り、近現代の社会問題に関わる宗教者の支援活動につ
いて、東京山谷地域で行ったフィールドワークに基づいて
考察した。
キリスト教・仏教等、主に宗教者が関わる団体について、
発表者はボランティアとしても関わってきたが、活動の理
念や宗教者個人のパーソナリティから支援活動の特徴を整
理した。
配食活動等の物的な支援は公的機関もある程度行ってい
る。しかしながら、ステークホルダー(被支援者等、利害
関係者)にとって、死といかに向き合うかなど、精神面の
ケアを宗教者等、民間が担う必要性、そこから新たな支援
のかたちを考える課題を指摘した。それとともに、日本の
伝統の信仰である神道や神社の、都市地域における新たな
時代の活動のありかたについても考察した。
東京五輪・パラリンピックを2 年後に控える中、山谷も
開発予定地域となる可能性が高い。そこでの、被支援者の
行方等にも注目する必要性があり、宗教施設や宗教者が果
たす役割等、今後、引き続き調査、考察を進めたい。