海で囲まれている我国は、豊富な海の幸に生活を支えられ長い歴史を生きてきました。
志摩半島、和具の潮かけ祭りは、海にもぐり、サザエ、アワビ、海藻などを採る海女さんたちの豊漁と安全を海神に祈る祭りです。
和具の港から約三キロ沖にある和具大島は、アワビなどの貝類や海藻の豊富な岩礁に恵まれ、古くから海女さんたちが活躍してきたところです。島には海の女神「市杵島姫命」を祀り、豊漁と海上安全を祈り祭りを続けて七百八十年余。島での祭祀を終わり、島からの帰り道、互いに清らかな海水を掛け合い、息災を祈る風習があるところから「潮かけ祭り」で親しまれてきました。
朝九時、大漁旗が飾られた行幸前広場に、和具小学校の鼓笛隊のマーチが響きます。十時、波止場に大太鼓を並べ、天にもとどけとばかりに「荒波太鼓」の揃い打ち。大漁旗をなびかせながら、家族や仲間と連れ立って、エンジンの音を響かせ、漁船の群れが大島へ出発します。ハマユウで知られた暖地植物の豊かな小島である大島へは、十数分で着きます。祭りの神事は、大きな木々が枝を広げる高台の森、祠の前で行われます。氏子代表ら数十名が厳粛な面持ちで威儀を正し参加する中で神事が進められます。浜では海女さんたちが早速海にもぐり、採ったばかりのアワビ、サザエ、海藻などを神前に持参、供えます。その間、若者たちは暑い日差しの中仲間とたわむれていますが、神事を終えてからの帰路、漁船が互いにすりより、バケツやホースで海水を盛大に掛け合うので、乗船者たちはたちまちびっしょり。悲鳴と笑い声がにぎやかに交差し、にぎわいます。

|