―4月18日(旧暦3月3日)―
和紙でつくった男びな女びなをさんだわらに飾り、千代川の清流にそっと置く(上)
鳥取市用瀬町の流しびな(下)

罪穢れ託され流れていく、哀感ただよわせる春の行事
古来、災害の多い島国だが、川あり山ありと地形の変化に富み、春夏秋冬の季節に恵まれ、豊かに穀物や果実が実る。ここに生を重ねてきた先人はその才覚を生かし、情緒深い祭りを演出、歴史を重ねてきた。全国各地で行われる春のひな祭りもその一つ。
なかでも鳥取市用瀬町の流しびなは、旧暦3月3日の祭日を守り早春の自然と和し、幼き娘たちも遠来の客の視線を受けて対応する様はみごとである。座敷にひな祭りの祭壇を飾り、仲良しの友を誘って和やかに食事を楽しみ、特産の和紙で作った男びな女びなに可愛い目鼻をつけ、さんだわらに飾る。季節の花やケーキを添え、さんだわらを持つ小女自身の罪穢れのすべてを、ひな人形に託して祈る。折から春の陽光きらめくなか、水嵩の増した千代川の清流にそっと置く。さんだわらは、流れに乗ってたちまち姿を消す、ちょっぴり 哀感をただよわせる春の行事である。
鳥取県鳥取市用瀬町
JR因美線用瀬駅下車
写真と文章:渡辺 良正