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 大晦日、形代に汚れを託して祓い、清々しい心で新年をむかえます。日本人のいつもかわらぬ姿です。「一年の計は元旦にあり」と、ふだんは特に気にかけない人達を含め、初詣をし、皆「おめでとう」と挨拶をかわします。今年も今年こそは幸せでありたいと願う心が、ほほ笑みを喜びをたたえ、言葉として自然にでてきます。「おめでとう」と繰り返し言葉を発し、言霊の作用によっておめでたくなろうとする無意識の予祝の心が、日本人の血肉のなかに、連綿と持続されています。古より、大地の恵に深くかかわってきた我が国は、作物の豊作が心の喜びなのです。多くの種類の芸能で演ぜられて来た「翁」はこの予祝の願いと祈りを 具現化した代表です。
 能の『翁』は、年の初めに多く上演されます。シメで飾られた能舞台自体、一種の結界です。能にして能にあらずといわれている『翁』は、特別の儀式曲として位置づけられています。千歳が場を清める舞のうちに、シテ方の翁役は、白式尉の面(おもて)をつけます。天・地・人の足拍子を踏み、天下太平を寿ぎ、国土安穏を祈り、大地のすみずみまで踏み鎮めます。
 また狂言方担当の三番三(叟)は、揉の段と鈴の段からなり、直面(素顔)で舞う揉の段では高く飛ぶ烏飛びという型もあり、鈴の段では黒式尉の面をつけ鈴を振って舞います。象徴的な白式にたいし、黒式の三番三(叟)は農耕の五穀豊饒の祈りを写しだします。まさに悪霊を鎮め、実りの精霊を呼び起こすが如く予祝を現出します。「翁」の芸能は、人々のいつの世にもかわらぬ心願の凝縮した姿なのです。
能楽協会理事・事務局長 瀬山栄一

平成14年1月(123号)の1面の記事です。



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