
デックラボーという妙な名前の神さまがいる。
藁束に半紙を巻きつけ顔を描いただけの、男女一対の簡単な人形である。この神さま、バント舟と呼ばれる椿の枝に乗せられ、大倉戸というこの集落を引き回される。そしてあちこちで子どもたちに笹竹で叩かれ、ぼろぼろになって捨てられるという、実に悲惨な末路を辿るのである。
それもそのはず、この神さまは厄神。行事が行われる2月8日と12月8日は「こと八日」と呼ばれて、全国にさまざまな風習が伝えられるが、中部地方では「送り神」というこのタイプの伝承が多い。
大倉戸では、送り出すのは子どもたちと決まっている。各家では、朝のうちに家の内外を御幣つきの笹竹で払う。この笹竹をオンビと呼び、払った後は、家の前に立てておく。すると、学校から帰ってきた子どもたちが勝手にこれを取って、集落の中ほどにある恵比須神社にもってゆくのである。境内には既に人形が用意されている。
午後3時半、僧侶がやってきて神前で経を上げる。場所は神社なのだが、この役は昔から東新寺の住職が務めることになっているのだという。それが済むと、まず境内で人形を叩く。

「おーくらどーのチャンチャーコチャン」
そう大声で囃したてながらオンビで叩き、続いて集落のあちこちを回って繰り返す。小一時間も続けた頃、集落の境まで来たところで終了となった。昔はそのまま人形を海に流したのだともいう。
子どもたちには最後に、お菓子のご褒美がくばられる。お菓子をもらいながら、ぼろぼろになった人形を見てつぶやく子がいた。
「なんだか可愛そう……」
※なお、新居町は平成22年3月23日より湖西市に編入される。大倉戸はその新居町の中の一つの集落である。
(静岡県浜名郡新居町)
Text & Photo by Hiromichi Kubota