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里神楽の夏祭り



里神楽(写真:久保田裕道)「なんかこわくない?」
 カキ氷やタコ焼きを片手にした中学生たちが、横目で見ながら通り過ぎてゆく。神楽殿ではちょうど江戸の里神楽、間宮社中による「天菩比上使(あめのほひのじょうし)」の演目が始まったところだ。
 大田区中央、春日神社の夏祭り。周囲にはたくさんの露店が立ち並び、親子連れや友達同士でごった返している。境内に入ると、「カタ抜き」や、「うなぎつり」といった昔懐かしい露店が出るのも、この夏祭りならではの慣習。そして拝殿に向かって左手にあるのが神楽殿。この日は、国の無形民俗文化財にも指定されている「江戸の里神楽」の一つ、間宮社中が詰めていて、ときおり神楽を演じているのだ。
 もともと神楽といえば、「霜月神楽」と言われるように秋から冬にかけての芸能だが、江戸の里神楽は、春から秋にかけて各神社の祭礼に出向いて演じる。大田区のこの付近では夏祭りを行う神社が多く、自然と神楽も夏の風物詩、といった印象になる。また滑稽な道化が、物語の登場人物として、頻繁に出てくるのも江戸の里神楽の特徴。小さな子が、「へんなかお!」と指さして喜んでいた。
 それにしてもアットホームな感じがいい。保存のための民俗芸能ではない。見ている人が少ないのは寂しいが、子どもが元気に走り回る中を、神楽は粛々と進んでゆく。「こわい」と言いながらも、立ち止まる中学生もいる。彼らにとって、それが夏祭りの里神楽なのだろう。願わくば、この神楽が彼らの夏の記憶の片隅に、少しでも留まりますように。そんなことが豊かな季節感のある暮らしを生むのである。
里神楽(写真:久保田裕道)


(東京都大田区 春日神社)
Text & Photo by Hiromichi Kubota




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