
「
ええ、疫病なんかから守ってくれる神さまだって」
お人形様の見下ろす雑貨屋のおばさんに、そう教えてもらった。ここ船引町の岩城街道には三基の「お人形様」が立っており、そのうちの屋形地区での話である。雑貨屋から見上げる小山には公園があり、さらにそこを上ってゆくと、両手を広げたいかめしい顔のお人形様が立っていた。
日本の神さまは一般に、そのお姿を現さない。御幣や榊などに依りつくことになっているのだが、このお人形様は異様なお顔を年中見せて存在しているのである。背丈はおよそ4メートル。木枠にむしろを張った胴体に、1メートル以上ある木彫りの面がベンガラや砥の粉で美しく化粧されて取り付けられている。さらに面の周囲にはたてがみと言わんばかりの杉の葉が青々と茂り、風に揺れていた。
この杉葉や胴体の一部を、年に一度「衣替え」と称して集落総出で交換する。以前は旧暦3月15日が衣替えの日と決められていたが、世情を反映して、現在は4月中旬の日曜日に変更された。他の朴橋(ほおのきばし)・堀越地区もこれに倣って、同日の衣替えとなっている。
しかしそれにしても、異相の神さまである。古い木札や幟に「久比毘古命」とあることから、古事記に登場する久延比古というカカシ神と解釈することもできるが、いわゆる「人形道祖神」という括りで考えた方がわかりやすいだろう。境に立って村に悪疫が入ることを防ぐのである。確かに、このお顔で見張られたら、疫病神も避けて通るだろうと納得させられる神さまである。
(福島県田村市船引町)
Text & Photo by Hiromichi Kubota
(平成20年5〜6月のトップページの記事です)