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法螺貝が鳴り響く中、燃えさかる松明を手に「ばば鬼」が登場した。その後ろから柿色の頭巾と衣に身を包んだ20人の子どもたちが、ゾロゾロとついてくる。彼らは「子鬼」なのである。ここは神戸市西区押部谷(おしべだに)町の近江寺(きんこうじ)、神戸とはいえ、ひっそりとした山中に立つ古刹である。2月11日、修正会(しゅしょうえ)の法会が営まれた後で「鬼やらい」が始まった。修正会とは寺院における正月儀礼で、その最終日に鬼が登場するのである。鬼といってもここでは不動明王と毘沙門天の化身であり、悪い鬼ではない。子鬼たちも、ご本尊に仕える童子とされている。 子鬼たちは本堂の外陣に2列で並ぶと、手にした「智慧の棒」を打ち合い始めた。「カチカチ、ユーユ」と声をかけながら、リズミカルに跳んでいる。やがて次の鬼が登場すると、棒打ちをやめてご本尊側に退いた。ばば鬼の他に、「おや鬼」と呼ばれる赤鬼や青鬼も順次やってくるのだが、そのたびに慌てて引っ込む姿が可愛らしい。 この行事は8地区の檀徒が毎年1地区ずつ交代で担当している。子鬼を担当するのも、当番地区に住む5歳程度から小学6年生までの子どもたちである。かつては男子に限られたが、少子化の波で男女ともに演じるようになった。1月に入って毎週日曜日に練習を積み、この日を迎える。もちろん、おや鬼たちも同じ地区の青年たちだ。やがて最後の鬼が、桜の花枝を持って登場した。もちろん造花なのだが、途端に堂内が華やぐ。そして子鬼たちも「終わりや!」と安堵の声を漏らしていた。 (兵庫県神戸市西区近江寺) Text & Photo by Hiromichi Kubota (平成19年3〜4月のトップページの記事です)
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